「歩いてしか」と書いてあってもあなどっていた。米沢駅2時発の送迎車は、これこそがヘヤピンカーブという、細い細いつづら折りの坂道をひたすら登り続ける。
遥か下に米沢の街並みが見降ろされ、明日の朝は雲海が綺麗だろうなと思う。
「宿の辺りは紅が混じって来て、ちょうど紅葉が見頃ですよ」と嬉しい言葉を聞き胸躍る。既に山の中は黄色黄色し時折オレンジも差し、これだけでも美しい紅葉が続いていた。。
一般客の車はここまでという狭い駐車スペースには、関東方面からの軽自動車が3台止まっていた。この道を知っている人は乗用車ではなく、軽で来ているのだ。
送迎車はこの先をもう少し進み、、荷物だけはケーブルを利用し宿まで運んで貰えるが、人はここから歩く事になる。
予想していたよりはるかに細い急坂だ。舗装しているクネクネ道には落ち葉が溜まり、滑らないよう要注意で下り続ける。
まだ?と思う頃にようやく紅葉に溶け込んだお宿のパステルカラーの屋根が見えてきた。とても可愛い一枚の絵になっている。そして緑のか細い吊り橋も見え、あれを渡るのだと思うと更に期待感が高まる。渓流をたずさえた紅葉の山の中に、まだ新しい造りの秘境の宿が佇んでいた。
こんな山奥にある温泉宿だが、向かえてくれる女将さん始めスタッフさんは、皆さん明るくとても元気。活気がある宿なのだという事が伝わってくる。
通された部屋はリニューアルされた洋室で、窓辺に面した細長い造りの部屋からは、四季の景観を楽しめるようになっていた。下を見ると、渓流沿いに建てられた露天風呂の真新しい湯小屋が並んでいる。
今年度は雪害と水害ダブルの被災からどうにか復興させ、要約9月から営業できたものの、例年通り11月1週目には厳冬期に備え営業を終了させるそうである。
湯小屋をたたみ、吊り橋さえ外すそうだ。と言う事はまた来シーズンのオープンには、宿として再生させると言う事なのだ。う~ん凄い温泉宿である。
大平(おおだいら)温泉滝見屋と言えば、噴出している温泉の露天風呂の写真がメインで載せられており、あの湯のイメージから私的には、浴感や雰囲気の良さが余り感じられなかったのだった。だから差ほど温泉には期待していなかった。ただ、歩いて辿り着く温泉宿。それだけでしかなかったのだった。
が!まず入った貸切露天風呂の気持ちよさにちょっと驚愕してしまった。そして真っ先に思ったのが「これは秘湯を守る会の温泉だ」と言う事だった。
白い細かい湯華が舞い踊る。湯華の多さにも驚いたが、それよりも熱めの(43℃近く)の温泉に、浸かった時の気持ち良さは、とにかく素晴らしく気持ちが良いものだった。
貸切風呂はやや小さめなので、それだけ湯が熱いのだが、男女の露天風呂と比べ泉質が違うのかと思う位気持ちが良かったし、湯底の小石もカラフルで可愛かった。
男女別露天風呂の方は広い分だけ湯もぬるめで、湯華の色が薄茶色い。熱い源泉を手で受け飲んでみると美味しい。少しだけ甘いような何とも美味しく、もっと飲みたいと思う数少ない温泉だった。
いずれの湯船からも渓流と紅葉や山肌を眺め、この先直ぐその上にある最上川源流に思いをはせながら浸かるのが、此処の温泉の醍醐味である。
特に男性用の湯船では、吹き上げ続ける源泉を見上げながら、自然に身を任せ恍惚と温泉に浸かっている姿を目にし、そうなる男性陣の気持ちが解らなくはないと思った。
内湯も見た目大した事は無い様にも見えたが、やはり何といっても泉質が良い。
源泉湧出個所はこの内湯ともう一つの貸切風呂(使用していなかった)が近いためか、尚更気持ち良く感じる。
湯華は露天風呂に比べ少なかったが、含硫黄‐カルシウム‐硫酸塩泉の生きた湯は、焦げた様な香りを伴いながら、何度でも入りたくなる病みつきの温泉だった。
湯縁に並べられた石には白い析出物が付着し、黒い床や湯舟に比しアクセント的な趣が感じられる。
そして、展望風呂でもあるこの内湯からは、遠くに火焔の滝が小さいながらも紅葉に包まれながら見えているのだ。
ちなみに火焔の滝は2階にあるロビーの窓からが一番良く見る事ができ、昔の人もここから眺めていたんだなという写真があった。
お重に入れて運ばれるお料理は、よくこの山底の宿でこれ程の物をと思う位、小綺麗で美味しく作られており感激した。
携帯の電波も入りにくく、勿論テレビは無い。ファンヒーター1つと温泉で温まるしかなく、自家発電のため突如電力不足で電気が止まったりもする。
更に驚いたのは、水の出がだんだん悪くなり手が洗えなかったり、歯磨き中に出なくなったりしたので2階にあるためかと思っていたが、何と水も山水であり量の調整はできず、自然な流れに任せているのでとの事であった。
当然温泉は自然湧出の加温加水無しの源泉かけ流しであって、気候・天候によって湯温が変わる。それは解るし、自家発電の宿も沢山あるけれど、水まで自然に任せている?!
何という温泉宿なのだろう。これ程自然と共に生き、自然の中で生かされている温泉宿とは、正しく秘湯を守る会の初代会長のメッセージそのものの宿の姿が、ここに存在していたのだった。
帰り道は息切れをしながら来た道を登る、登る。途中車に乗るよう勧められたが、雲海も見たく写真も撮りたいので断ったが、徒歩でとは言っても歩けなかったら、行きでも帰りでも車に乗せて貰えるのだった。
女将さんはこの細い車幅だけの急坂を、よく転げ落ちず軽トラを運転されるものだと感心する。怖くないですか?の問いに「嫁いで来た時から行くしかなかったから」と笑って話された。
滝見屋さんのHPを改めて読むと、112年間壊れても壊れても何度も守り次いで来たというお宿の歴史が実感として伝わってきて涙が浮かんできた。それは行ってみたからでこそと言えるが、行く価値、存在し続けている価値が、伝わって来る宿であるからこそだと思う。
帰りに聞こえてきた話し声には「はまってしまう」という言葉があったが、確かにそうだ。この温泉宿に「はまってしまう」という気持ちが私にも解った。心は早来年の新緑時の再訪に向かい待ち遠しい。
アクセス例:JR米沢駅から1日1本14時発の送迎あり。車なら滝見屋営業所まで行き、そこから送迎車利用可。
これぞ秘境にある抜群に気持ち良い温泉にはまる
「歩いてしか」と書いてあってもあなどっていた。米沢駅2時発の送迎車は、これこそがヘヤピンカーブという、細い細いつづら折りの坂道をひたすら登り続ける。
遥か下に米沢の街並みが見降ろされ、明日の朝は雲海が綺麗だろうなと思う。
「宿の辺りは紅が混じって来て、ちょうど紅葉が見頃ですよ」と嬉しい言葉を聞き胸躍る。既に山の中は黄色黄色し時折オレンジも差し、これだけでも美しい紅葉が続いていた。。
一般客の車はここまでという狭い駐車スペースには、関東方面からの軽自動車が3台止まっていた。この道を知っている人は乗用車ではなく、軽で来ているのだ。
送迎車はこの先をもう少し進み、、荷物だけはケーブルを利用し宿まで運んで貰えるが、人はここから歩く事になる。
予想していたよりはるかに細い急坂だ。舗装しているクネクネ道には落ち葉が溜まり、滑らないよう要注意で下り続ける。
まだ?と思う頃にようやく紅葉に溶け込んだお宿のパステルカラーの屋根が見えてきた。とても可愛い一枚の絵になっている。そして緑のか細い吊り橋も見え、あれを渡るのだと思うと更に期待感が高まる。渓流をたずさえた紅葉の山の中に、まだ新しい造りの秘境の宿が佇んでいた。
こんな山奥にある温泉宿だが、向かえてくれる女将さん始めスタッフさんは、皆さん明るくとても元気。活気がある宿なのだという事が伝わってくる。
通された部屋はリニューアルされた洋室で、窓辺に面した細長い造りの部屋からは、四季の景観を楽しめるようになっていた。下を見ると、渓流沿いに建てられた露天風呂の真新しい湯小屋が並んでいる。
今年度は雪害と水害ダブルの被災からどうにか復興させ、要約9月から営業できたものの、例年通り11月1週目には厳冬期に備え営業を終了させるそうである。
湯小屋をたたみ、吊り橋さえ外すそうだ。と言う事はまた来シーズンのオープンには、宿として再生させると言う事なのだ。う~ん凄い温泉宿である。
大平(おおだいら)温泉滝見屋と言えば、噴出している温泉の露天風呂の写真がメインで載せられており、あの湯のイメージから私的には、浴感や雰囲気の良さが余り感じられなかったのだった。だから差ほど温泉には期待していなかった。ただ、歩いて辿り着く温泉宿。それだけでしかなかったのだった。
が!まず入った貸切露天風呂の気持ちよさにちょっと驚愕してしまった。そして真っ先に思ったのが「これは秘湯を守る会の温泉だ」と言う事だった。
白い細かい湯華が舞い踊る。湯華の多さにも驚いたが、それよりも熱めの(43℃近く)の温泉に、浸かった時の気持ち良さは、とにかく素晴らしく気持ちが良いものだった。
貸切風呂はやや小さめなので、それだけ湯が熱いのだが、男女の露天風呂と比べ泉質が違うのかと思う位気持ちが良かったし、湯底の小石もカラフルで可愛かった。
男女別露天風呂の方は広い分だけ湯もぬるめで、湯華の色が薄茶色い。 熱い源泉を手で受け飲んでみると美味しい。少しだけ甘いような何とも美味しく、もっと飲みたいと思う数少ない温泉だった。
いずれの湯船からも渓流と紅葉や山肌を眺め、この先直ぐその上にある最上川源流に思いをはせながら浸かるのが、此処の温泉の醍醐味である。
特に男性用の湯船では、吹き上げ続ける源泉を見上げながら、自然に身を任せ恍惚と温泉に浸かっている姿を目にし、そうなる男性陣の気持ちが解らなくはないと思った。
内湯も見た目大した事は無い様にも見えたが、やはり何といっても泉質が良い。
源泉湧出個所はこの内湯ともう一つの貸切風呂(使用していなかった)が近いためか、尚更気持ち良く感じる。
湯華は露天風呂に比べ少なかったが、含硫黄‐カルシウム‐硫酸塩泉の生きた湯は、焦げた様な香りを伴いながら、何度でも入りたくなる病みつきの温泉だった。
湯縁に並べられた石には白い析出物が付着し、黒い床や湯舟に比しアクセント的な趣が感じられる。
そして、展望風呂でもあるこの内湯からは、遠くに火焔の滝が小さいながらも紅葉に包まれながら見えているのだ。
ちなみに火焔の滝は2階にあるロビーの窓からが一番良く見る事ができ、昔の人もここから眺めていたんだなという写真があった。
お重に入れて運ばれるお料理は、よくこの山底の宿でこれ程の物をと思う位、小綺麗で美味しく作られており感激した。
携帯の電波も入りにくく、勿論テレビは無い。ファンヒーター1つと温泉で温まるしかなく、自家発電のため突如電力不足で電気が止まったりもする。
更に驚いたのは、水の出がだんだん悪くなり手が洗えなかったり、歯磨き中に出なくなったりしたので2階にあるためかと思っていたが、何と水も山水であり量の調整はできず、自然な流れに任せているのでとの事であった。
当然温泉は自然湧出の加温加水無しの源泉かけ流しであって、気候・天候によって湯温が変わる。それは解るし、自家発電の宿も沢山あるけれど、水まで自然に任せている?!
何という温泉宿なのだろう。これ程自然と共に生き、自然の中で生かされている温泉宿とは、正しく秘湯を守る会の初代会長のメッセージそのものの宿の姿が、ここに存在していたのだった。
帰り道は息切れをしながら来た道を登る、登る。途中車に乗るよう勧められたが、雲海も見たく写真も撮りたいので断ったが、徒歩でとは言っても歩けなかったら、行きでも帰りでも車に乗せて貰えるのだった。
女将さんはこの細い車幅だけの急坂を、よく転げ落ちず軽トラを運転されるものだと感心する。怖くないですか?の問いに「嫁いで来た時から行くしかなかったから」と笑って話された。
滝見屋さんのHPを改めて読むと、112年間壊れても壊れても何度も守り次いで来たというお宿の歴史が実感として伝わってきて涙が浮かんできた。それは行ってみたからでこそと言えるが、行く価値、存在し続けている価値が、伝わって来る宿であるからこそだと思う。
帰りに聞こえてきた話し声には「はまってしまう」という言葉があったが、確かにそうだ。この温泉宿に「はまってしまう」という気持ちが私にも解った。心は早来年の新緑時の再訪に向かい待ち遠しい。
アクセス例:JR米沢駅から1日1本14時発の送迎あり。車なら滝見屋営業所まで行き、そこから送迎車利用可。
米沢八湯の一つ
日帰りで行きました!
駐車場から山を歩きます。これが、中々の距離でした。露天風呂は最高でした。